ほしのまき

FB や Tw では流れてしまうので、ためておきたいことをここに書きます。

ワーキングマザー1年生との往復書簡

 

ある日、ワーキングマザーの友人からSOSのメールがありました。
私より一回り以上若く、大学生の頃からしっかりしたひとです。
就職したのは、比較的、女性が活躍しやすい会社だという印象の大企業。
真面目に一生懸命、キャリアを重ねてきたようでした。

 

赤ちゃんを保育園に預け、復職して4ヶ月たちました。

とにかく必死でやってきましたが、時間の経過と共に仕事の負担が増えていき、満足できるアウトプットがなかなか出せなくなりました。仕事を持ち帰ることもありますが追い付かず、助っ人が必要だと上司に相談したところ「理解できない」と一蹴され、もはや退職すべきか悩んでいます。 

フレックスや時短を利用することも考えましたが、それではできる仕事が限られてしまいます。
 
どうしたら、「子どもの世話があるので帰ります」と堂々言い張って帰れるでしょうか。
どうしたら、満足に仕事ができない自分を納得させられるでしょうか。 

 

彼女の切迫感におされて、私は、一気に返事を書きました。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

以前、職場は独身者ばかりと伺いました。
正直、やりづらいだろうなあと思います。
私が一人目を出産して復職した職場は子持ちのおじさまが多く、
子育ての大変さをうっすらとでも共感してくれて、ありがたかったです。
子どものいない仕事のできる女性より、話が通じて気持ちが楽になる面がありました。
 
上司の方は、はじめてワーキングマザーを部下に持つのでしょうか。
上司の「教育」が必要かもしれませんね。
社内のダイバーシティー推進の組織なり、ワーキングマザーのネットワークの
力を借りたり、相談なさってますか。
会社の仕組みのなかでうまくやるコツを得られたり、
運がよければ、上司へ働きかけてくださる方と出会えるかもしれません。
 
私は自分が上司の「教育」に直接踏み込んだことはありませんが、
ワーキングマザーを部下に持つ男性から相談を受けたことは何度かあります。
以前の会社の別の部署で、産休に入る女性とその上司にランチに誘われ
実際どういう働き方になるのか、いろいろインタビューされました。
別の、M&Aをやっている友人(男性)から、
部下の女性が18−21時は子どものケアでunavailable になるのだが
そういうものなのか(その女性が要領が悪いだけではないのか)、
という相談を受けたこともあります。
また、経営者の知り合いからは、秘書が産休から戻ってくる時に
実際、私がどうやって日々をまわしているのか、
何は期待してよくて、何は期待してはダメなのか、きかれました。
 
要は、上司の方も手探りなんじゃないか、と思うのです。
 
あなたをサポートしてくれる人材の配属が来年だとすると、
まず1年間、いまの職場でどう乗り切るか、
やり方を考えてみませんか。
 
 
どうしたら、「子どもの世話があるので帰ります」と堂々言い張って帰れるでしょうか。
どうしたら、満足に仕事ができない自分を納得させられるでしょうか。 
 
切実ですね。私は、子育てしながら仕事をして10年ですが、
上の2つのどちらも出来てないです。がっくり。
早く帰ることについては、年とともに多少面の皮が厚くなってきましたし、
今の職場は非常に自由で、理解もあります。
それでも「お先に失礼します」の挨拶は、情けないくらい、こそこそしています。
満足に仕事ができないということについても、
少しずつ、自分への期待値を修正しているものの、
時間的にも精神的にも仕事に全力投球できないでいる歯痒さを
感じない日はありません。
 
一人目の子どもを保育園にいれて復職した時はピンときていませんでしたが、
私の職業人生の年月の少なくとも半分は、
こういうジレンマの中でやりくりしなきゃいけないんだな、とあるとき気づき、
あちゃー、と愕然としたのを思い出しました。
(今後、介護もしなくてはならなくなるかもしれませんし…)
 
でも、一方で、ワーキングマザーであることは、
独身者、あるいは子どもを持たずに仕事をしている方には
得られない成長機会だと思うのです。
(というか、日々、そのつもりで仕事にも家庭にも取り組まないと、
バカらしくてやってらんない)
 
あなたは、上司に期待されているようですね。
負担に感じて大変かもしれませんが、
「子持ちの女に仕事なんか頼めない」と干される(あるいは過剰に気をつかわれる)
ケースも耳にします…。ちょうどよい頃合いって、なかなかないのかもしれません。
 
上司の方と、こんな相談はなさってますか。もう一歩、深められますか。
●時間の制約の中で、自分がバリューを出せる仕事はこれだと思う、また、こういうアウトプットを期待されていると理解しているんだけど、認識はあっているか
●会社全体の視点からみて、付加価値が相対的に低い仕事、またはあなた以外の方がやったほうがよさそうな仕事として、これとこれがあるように思うが、どうだろうか
 
自分対上司の対立構造ではなく、自分がなるべく上司の目線に寄り添って
「自分+上司のチーム」対「成し遂げるべき仕事」の構図に持って行くと
互いに解決策を話し合いやすくなるんじゃないか、というのが私の見解です。

こういうコミュニケーションができたら、
あなたもこれまでとは違った形で、
プロフェッショナルとして成長できるし、きっと。

もうひとつ、フレックスや時短ですが、仕事内容とのバランスで
一時的にでも活用したほうが、精神的に楽になるかもしれません。
私はフレックスを最大限活用していました。
上の子ひとりの時期も、週2回、決まった曜日にシッターさんに来てもらい、
その日にまとめて仕事をしていました。
(まれに仕事が楽な時は、ひとりで本を読んだり、知り合いと食事に出かけました)
 
長い職業人生のうち、数年間仕事がスローダウンしても大丈夫です。
まだお若いうちのスローダウンは、後で取り返せます。
40歳代後半とか50になってスローダウンするより、遥かにリスクは小さいです。
 
一般論ですが、転職は、決して楽な選択肢ではないと思います。
乳児をかかえて、つまり子どもの体調不良のたびに
遅刻早退やお休みを繰り出さざるを得ない勤務状況で
新しい職場でゼロから信頼関係をつくることと、
少なくともこれまでの信頼貯金のある今の職場で
様々な交渉をすることの天秤になるのではないでしょうか。
(また、いったん完全に退職してしまうと、
また仕事に戻るのは結構大変かも…)

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 
その後、彼女からお返事が来ました。
上司は管理職になったばかりで、
若いチームをまとめるのに彼女を頼りにしていること。
仕事の分担の見直しを提案したら、
若いメンバーの勉強にもなるから是非、と喜ばれたこと。
また、若い独身のメンバーには
「家で仕事できるんだったら、残って一緒にやってほしい」などと
ちぐはぐなお願いをされ、傷ついていたが、
今までよりも具体的に
「18〜21時は子どもの食事と寝かしつけの時間。
その後なら家からメールや電話で対応できる」と
自分の状況を共有して、連携が取りやすくなったこと。
仕事は手足を動かすことだとしか思っていなかったが、
仕事の仕方を変える視点が持てるようになった。
まだまだ手詰まりではないと希望が持てて、気持ちが楽になった、と
書いてくれました。
 
私も、これから2度目の「小1の壁」に直面します。がんばりまーす!

グロービスの英語授業に「ほぼ日」が。

先日、グロービス経営大学院の授業におじゃましてきました。グロービスでは「ほぼ日刊イトイ新聞」を題材にしたケース(教材)を日英両方作ってくださっています。英語版はを使って授業を行うところを見学させてもらうことにしたのです。

「この授業は社会人学生28名が受講しています。出身国は日本含めアジア・アフリカ・欧・米の4大陸から16カ国とさまざまです。」

事前にそう知らされて、びっくりしました。グロービス、いつの間にそんなに多国籍化してたの!? 学生誘致にそうとう力を尽くされているのではないかと思います。

授業は、マーケティングがテーマの応用クラス。講師の説明、問いの投げかけ、グループ討議、クラス全体討議を織り交ぜながら進みます。

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↑一見して多国籍!

 

印象的だったのは、受講生の意見や質問が、本質に迫るかんじだったことです。

「この会社がいわゆる市場調査をしないのは、ユーザーの期待を超えるものを提供したいからだと思います」とか、

「トップページに出てくる『ダーリン』は親しみやすさ、『メニュー』は好きなコンテンツだけ楽しめばいいという意味を感じさせ、メタファーとして効果的」

なんて言う意見が、ぽんぽん出てくる。

こんな意見も出てきました。

「自分から見ると、メタファーがちょっと『やりすぎ』な感じ (pretentious) もする。このまま英語にして他の国に持っていっても、笑われちゃうかもよ」

何を言ってるんだろう、この人は。まず違和感を持ちました。でも、ちょっと考えてみれば、糸井重里というものを全く知らなければ、当然の反応です。トップページの「今日のダーリン」「今日の新メニュー」という表現は、糸井重里が日本において発信するには効果があるけれど、他の文脈では通用しないかもしれない。ほぼ日の創刊初期から読者だった私は、すっかり慣れてしまって、自分ひとりでは気づくことのできない貴重な視点をもらえました。

 

この1年ほど、ほぼ日の事業について説明する機会を時々いただくようになりました。ありがたいことです。こうした機会では、社長の与える印象が強いせいか、個人事業ではなく会社として運営していること自体に、まず驚かれます。また、社長へのリスペクトの気持ちからか、何かうまくいっているとしたら社長がすごいから/有名だからでしょ、という前提の質問を受けることも少なくありません。

そうした経験と対比して、今回、外国人学生の意見や質問から気づかされることが、たくさんありました。日本語の力が限られていて、ウェブサイト「ほぼ日」も「ほぼ日手帳」も知らない人たちが、英訳されたケースから、自分も明確に意識していなかったような洞察を提示してくれるのです。

これは、「文脈をどっぷり共有してない」から生まれた気づきであり、面白さだと思いました。外国人学生たちは、糸井重里を知らない。日本の生活文化における糸井重里の影響や位置づけを知らないから、先入観がない。事業のやっていることを知ったとき、「社長が有名だからできるんだよね」「全部、社長のヒラメキでコンテンツ作ってるんでしょう?」といった思考停止にハマらずにすむ。

かといって、文脈を全く共有していないわけではありません。彼らは、日本でMBAをとり、いずれ日本で仕事をしたいという強い動機があり、マーケティングに興味があって授業を履修しているのです。さらに、「ほぼ日」の現状という「事実」をケースの形で共有していました。

文脈をどっぷり共有していないけれど、動機や興味の方向が重なるひとと対話をすると、自分の先入観を気持ちよく取り払ってくれるような気づきが得られるのですね。

 

少し話が飛びますが、「ダイバーシティーがすすむと、イノベーションがうまれやすくなる」と短いフレーズで言い切っているものを見るたび、ちょっと気になっていました。なぜ、ダイバーシティーがすすむと、イノベーションがうまれやすくなるのでしょうか。

もう少し細かく、「ダイバーシティー」(多様性)から「イノベーション」へのつながりが説明できるかもしれない。グロービスの授業見学から得た印象を起点に考えてみました。

ダイバーシティー(多様性)とは、「文脈をどっぷり共有してない人たちがチームに参加している」ということです。性別、年齢層、人種など「多様化」の指標のように言われていることは、どれも「文脈」の代替指標なのではないでしょうか。

文脈をどっぷり共有していない人たちは、チームのそれまでの暗黙の前提を共有していません。それまで当たり前とされていたことを、知らなかったり、必ずしも共感しなかったりします。その姿勢で現状を見て、思考停止せずに「なぜ?」と問うてくれます。暗黙の前提が明示的になります。暗黙の前提の枠内で閉じていた発想では考えつきにくい、素朴なアイディアも出るでしょう。それらの質問やアイディアは、そのままでは使い物にならないことの方が多いかもしれません。これまでの文脈の「常識」「あ・うんの呼吸」を突破するきっかけには、なりそうですが、それだけと言えば、それだけ。

そうすると、ダイバーシティーがイノベーションにつながるには、他にもいくつか要素がいりそうですね。

ひとつは、文脈を共有しないメンバーからの質問やアイディアに共感するにせよ、違和感を感じるにせよ、「なぜそう感じるか」を考え、受け止め、共有し続ける姿勢です。「え?」と思うような質問に「うるさいな」と封じ込めてばかりでは、思考停止のままですよね。考え、「言われてみれば、そうだ」でもいいし、「いや、ここでは、そのようには考えないんだよ」と説明してもいい。共有し続けるうちに、そのチームにとって揺るがせにできない大事なことと、変えてもかまわない枝葉の部分が、少しずつ明らかになるのではないでしょうか。

もうひとつは、「多様性」とは言っても、チームの価値観や動機を共有できる人たちでないと、成果を出すのは難しくなる、ということ。グロービスの外国人学生の例でいえば、糸井重里の存在感はまったく共有していないけれど、マーケティングへの興味や、提示された事実から学ぼうとする姿勢は共有できていました。多様性と価値観の共有、一見、逆説的なようですが、多様性のあるチームで仕事をすすめていくと、揺るがせにできない価値観や動機などが絞り込まれて明確になる。その絞り込まれた価値観は死守するように新しいメンバーを探すと、他の属性は多様になる。こんな循環になりそうです。例えば「とにかく女性を増やせ」という取り組みが乱暴だなあ、と感じてしまうのは、このあたりのダイナミクスへの配慮が読み取れないからなんだと思います。

 さらに、「変わりたい」「現状を突破したい」という本気の「問い」がチームに共有されていないと、メンバーの多様性イノベーションに結びつきません。「問い」が本気であればこそ、「多様性」がもたらす素朴な疑問やアイディアをきっかけに、みんなに共通する「普遍のテーマ」を追求する方向に話が転がり、本質的なイノベーションに一歩近づきます。

 

3時間の授業の見学から、いろいろ考えを深めるきっかけを頂けました。ありがとうございました。

 

 

東北≒海兵隊

先日、アメリカ海兵隊で戦地で活躍された後、被災地を訪れた方とお話しする機会がありました。

 

「東北には、海兵隊と同じレベルの、熱い志と力を持っている人が何人もいる。」

 

東北≒海兵隊

 

海兵隊の将校レベルに対する私の勝手なイメージは体・頭脳・心が優れている、若い優秀な人が海兵隊を志したら応援するし、入れたら尊敬するし、海兵隊の将校を辞めた若い人はその先のキャリアも期待ができる、って感じ。

 

もし、東北の被災地ではたらくことに対する世の中のイメージが、海兵隊と同じようになったら、おもしろいなあ。「被災地、かわいそう、支援してあげなきゃ」「復興支援≒社会貢献(いいこと)」で止まらずに、「被災地、冒険、自分を試し、鍛える場。」「憧れ」というイメージまで膨らませる。

 

大企業の「東北事業部」がエリートコース視される。転職先が被災地の事業だと「えらいねえ、大変そうだけど頑張って」だけじゃなくて「すごい、かっこいい。さすが○○さん」って言われる。高校の先生が、見込みある子に「地元の大学より、東北の大学に進学して被災地支援のインターンをしっかり経験するのはどう?」って勧める。「うちの子は東北で頑張ってるんですよ」といなかのお母さんがちょっと誇らしく話す。

 

もちろん、海兵隊は組織で、東北は地域社会だから、大きな違いもある。たとえば、地域社会では、社会的弱者を包み込むような動きが必須。もし海兵隊のたとえに違和感があるなら、地方の優秀で志ある若者が目指したいまち、たとえば「東京」みたいなデスティネーションに東北がなったら…というイメージでもいいんです。あるいは、海外留学と同じくらい、「東北でゼロから何かを立ち上げようとしている事業者のインターン」も人気で、周りも認める選択肢になるとか、ね。

 

それに実際、被災地には海兵隊のような出来上がった組織はない。入隊したら一定の訓練プロセスに乗って最低限の力をつけ…といった、組織の経験に裏打ちされた育成手順はないから、個人の力量に依存する分量が大きい。とても豊かな経験をする人と、何も得られない人の差は大きいでしょう。

 

それでもなお、「東北≒海兵隊」のイメージが、なんだか魅力的だなって思う。要は「かっこいい!」というイメージになったら、すごく変わるよなあってこと。

 

ここまで書いて、Teach for America を思い出した。

Teach For America | Home

アメリカで、貧困地域などの学校に優秀な大学新卒の若者を教員として送り、教育水準を上げるとともに、若者にも深い社会経験を積んでもらおうというNPO。アメリカの文系大学生の就職先人気ランキングではここ数年、トップ10にランクインし続けています。

 

アメリカの貧困地域に教えてに行く仕事を「かっこいいもの」にしたTeach for America の役割を果たす仕組みが、東北支援にあるといいんだな…。

(もしすでにそういう動きがあるなら、ぜひ知りたいです。)

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「GIVE & TAKE 『与える人』こそ成功する時代」/アダム・グラント

ビジネスで成功、ときくと、「競争に勝つ」というイメージです。
提案が採用され、交渉ごとも少しでも得をするようにすすめ、競合を出し抜き、蹴落とし…
 
ところが、相手に「与える」人のほうが、自分の得だけを追求する人よりも
成功していることが、さまざまな分野を調査して分かった。
その事実と理由を、組織心理学の見地から解き明かしている本が、こちらです。

 

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

 

 

著者のアダム・グラントは、31歳の若さでウォートンスクールの教授をつとめる、気鋭の心理学者です。
「楽しくてもっとはたらきたい」と思うように仕事をデザインする、組織心理学が専門です。
 
私は、昨年5月に、英語版を読みました。洋書に詳しい知り合いに薦めてもらったのです。
かなり興奮!しながら読み進めました。
著者の関連記事やブログなどを追いかけ、年末年始に再読して、改めて、よかったです。
 
日本語版は、1月10日発売だそうで、この記事は、原著を元に書いています。

 

Give and Take: A Revolutionary Approach to Success

Give and Take: A Revolutionary Approach to Success

 

 

この本では、仕事における人の行動を、3つのタイプに分けて考えます。
何事も自分の有利に運ぼうとする、テイカー。 (taker)
相手との損得をイーブンにしておきたい、マッチャー。(matcher)
相手の利益になることを優先したい、ギバー。(giver)
 
ビジネスでは従来、テイカー的行動が成功の秘訣と思われてきました。
ギバーは、職場の「いい人」だけれど、
ビジネス的成功という観点では、
ノーと言えず、カモにされ、踏み台にされる役回りのイメージです。
 
さまざまな職業で調査をしてみると、
確かに、もっとも成功していない、ダメダメグループにはギバーが多かった。
 
ところが、一番成功しているトップ層にも、ギバーが多いのです。
相手の利益を優先しながら仕事をしている「いい人」は
テイカーよりも成功を収めるようだ、と分かったのです。
 
本の前半では、ギバーがなぜ成功するか、
たくさんの具体例と、学術研究の例をひいて解説します。
 
後半では、成功するギバーと、「いい人」なだけでカモにされるギバーの
違いを解明していきます。
 
ここで、私がおおっ!と思ったのは
 
「相手の利益を大切にすることと、
 自分の利益を大切にすることは、両立する。
 対立軸ではない」
 
という考えでした。
 
成功するギバーは、無意識のうちに
このことを良く分かって行動している人たちだったのです。
 
本と同じくらい面白いのが、著者自身の人物像です。
クーリエ・ジャポンの2013年7月号に、詳しい記事がありました。
 
元記事は、New York Times Magazine です。
 
著者のアダム・グラントは、彼自身が、「超ギバー」で、
そんな自分のあり方が、研究テーマに投影されていったようです。
 
彼が大学院時代に行って、大変に注目を集めた実験がすばらしく、
クーリエジャポンの記事からその部分を引用します。
 
資金集めを目的とした大学のコールセンターで調査を実施した。
コールセンターは満足度の低い職場として知られている。
同じことの繰り返しだし、ひどい言葉を投げかけられることもあるので
精神的につらい仕事だ。
 
グラントは、センターの主目的のひとつは奨学金の資金集めだったため、
その奨学金で助かった、という学生を連れてきた。
電話をかけていた人たちは10分休憩を取り、この学生の話に耳を傾けた。
学生は奨学金のおかげで人生が変わったこと、
理想の職場で働くことになりわくわくしていることなどを話した。
 
結果はグラントさえ驚くようなものだった。
学生が話をした1ヵ月後、スタッフの電話対応時間は142%も増加し、
集まった資金は171%も増えていたのだ。

 

この実験で、まだ大学院生だったアダム・グラントは一躍、名を馳せました。
ダニエル・ピンクの新著でも、この実験が引用されていましたね。 

人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!-ダニエル・ピンク

 

周りの人のために何かをすることが、成功につながるって、すてきな考えですよね。

読んでうれしくなった本でした。

考えをキャッチボールしながら深める仲間づくり

私は、書くことは苦手です。日記はつけたことがないし、議事録や面談記録などは筆が遅くて周りに迷惑をかける。年賀状も…すみません。

 

そんな私が、何かを書いてためてみようかな、と思うようになりました。書いてみたいこと、書けそうなことの断片が、あれこれ浮かぶのですが、なかなか書き始めない。毎日そんな状況で1ヶ月ほどたち、改めて「なぜ書きたいんだろう?」とふり返ってみました。

この数年は、刺激的なインプットをたくさん受けています。二児の母になり、生活のペースが一変し、家族との関係もどんどん変わり、子どもを通じた交友関係も新たに生まれました。自分にとって仕事とは?といった根源的な問いから、今日の業務と育児をいかに綱渡りして乗り切るか?という超現実的、超短期的な問題まで、それまで自分に問うてこなかった課題に日々直面するようになりました。

職場も、ありがたいことにルーティンからほど遠い環境が続いています。前職では事業の売却、統合の渦中にあり、オーナーが変わることの組織的なインパクトを身をもって体験しました。現職は、書く、デザインする、企画するといった「ゼロからイチをうむ」全く新しい環境で、初めの2年ほどは周りで起きていることを理解するに至るまでで精一杯だったほどです。

 

子どもが生まれた頃からビジネス書やノンフィクションを中心に、それまでよりも本ををたくさん読むようになりました。初めは「自分はこのままではダメになってしまう」という焦りから。そして現職にうつってからの読書の目的は、今の職場の仕組みを自分なりに、ビジネス的に体系立てて理解したくて、そのヒントを探すことに重点が少しずつ移ってきたようです。

インプットがたまってくると、それを周りと共有したくなります。もともと、見聞きしたことや自分の考えを周りに話して一緒に面白がり、膨らませられる環境にワクワクするほうです。現職に移った時も、「読んだ本の話が普通にできる、普通に聞いてもらえる!」というのが、ほんとうにうれしかった。前職では、そういう仲間がちょっと少なかったものですから。

日常的な発見や面白いことは、身近な人と話したり、FBで共有しています。でも、仕事にまつわるテーマの共有は、それだけでは少しずつ足りなくなってきました。そのテーマとは、クリエイティブな仕事を、会社組織で続け、きちんと収益をあげていること。この仕組みの体系化が面白いのですが、今の同僚たちは、まさに渦中で日々「ゼロからイチ」を生もうと格闘していて、一歩引いた「体系化」の仕事は手がけづらい。では、かつての職場の仲間などはどうかというと、「クリエイティブ」というものが具体的にイメージしづらそうで、すぐにはノってもらえません。このテーマを面白がり、一緒に考えをキャッチボールしながら深められる仲間をつくりたい。それには、まず発信。発信してみたら、同僚達、昔の知り合い、そして新しい出会いから、一緒に探求しようという仲間がつくれるんじゃないか。そんな個人的動機もあって『ポーター賞2012』に応募し、幸いにも受賞することができました。

株式会社東京糸井重里事務所 | 受賞企業・事業部レポート | ポーター賞

 

ポーター賞2012』の応募準備を進めている頃から、少しずつビジネス系メディアに取材していただく機会を頂きました。応募に向けて、事業の仕組みのロジックを組み立て文章にまとめていく作業を重ね、糸井事務所の事業について「ビジネス側」の文脈で少しお伝えできるようになったからだと思います。

しかし受賞後、「考えて書く」ことは止まってしまいました。もちろん日常業務のことは考えるし、ある程度まとまった文書も作りますが、「体系化」にむかっての歩みとしては、全く不十分なままです。もともと、必要なければ書かないタイプで…。

一緒に考えをキャッチボールしながら深められる仲間をつくりたいな。それには、まず自分がしっかり考えて発信しないと。私の場合は

ただ話す < プレゼンを準備する < 文章を書く 

という順に、考えがしっかり練られます。

「書きたいなあ」という思いがちょっとずつたまっていたのは、実はこんな理由じゃないかと思っています。

 

長々と書いたわりには、ここで書くことが続かない自信、けっこうあります。何しろ書くことが苦手で、ここまで書くのに随分時間をかけてしまいました。今後、時間をどう捻出するか、まだ分かりません。今日、この一本を書いておしまいになっても…いいや。ちょっと悔しいけれど、それで「ほんとに書きたいの?」という問いに対する自分の本当の動機が分かるようになるなら。

(もし次を書くとしたら、当然ですが、仕事に関しては既に発表された情報しか触れません。お約束。)

美しい声

1年前の年の瀬のこと。

年忘れの集りに呼んでもらった。隠れ家のようなお店。

私たちのグループがだいぶ盛り上がって来た頃、

もう一団、お客さんが入って来た。

 

スタイルのいい女の人だなあ。

 

と思ったら、

テレビをほとんど見ない、疎い私でも知っている女優さんだ。

美容院で読んだ雑誌にインタビューが載ってたな。

子育てもしていて、舞台を中心に頑張ってる様子が

飾らない雰囲気で、好印象だった。

 

お店もこじんまりしているし

みんなわきまえているお客さん達で、

ちらっとその女優さんを見て、互いにちょっと目配せし合った後は

普通に振る舞おうとしていた。

 

お仲間と、楽しそうにおしゃべりを始める女優さん。

聞くとはなしに、耳に入ってしまう。

 

話の内容は分からないけれど、その声が。

美しい。

 

「鈴のような」という表現があるけれど、

こういう声のことをいうのだ、と初めて知った。

 

声がいいときくと、歌声のイメージしかなかったけれど

仲間うちの話し声がこれだけ美しく隣のテーブルに届くかたって、

あるんですね。

 

私たちはしばらくして先に出たので

その女優さんと同じお店に居合わせたのは30分ほど。

それでも、1年もたった今でも、

あの声のことも、耳にしたときの「わあっ」と感じた気持ちも

ありありと思い出す。

 

いつかこのことを書こうと思い続けたほど、

心に残った。

 

人の美しさっていろいろあるけれど

「声」を意識した、初めての経験でした。

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「すべてはモテるためである」/二村ヒトシ

 

この本を初めて知ったのは、糸井重里のツイートです。

 

 

 

男子がモテるにはどうすれば?という主題ですが、前半は数多の自己啓発書、ビジネス書を凌駕する切れ味です。いわく、モテないのはキモチワルイから。キモチワルイのは、自分を過大評価したり過剰に卑下してるから。自己評価が安定しないのは、自分がないから。

 

したがって、オタク即モテない、ではない。オタクでも自己評価が安定していれば、同じオタク道の女子にモテる、と。

 

後半は「キャバクラに行っていろんな女の子とおしゃべりする経験値を積もう」といったあたりから段階を踏んでいきます。ここは、具体論としては興味を持たなかったけれど、「戦略読書日記」で楠木建さんが主張されている「スキルよりセンス」「センスは育てられない。しかし育つ」と通底するものを感じました。