ほしのまき

FB や Tw では流れてしまうので、ためておきたいことをここに書きます。

「GIVE & TAKE 『与える人』こそ成功する時代」/アダム・グラント

ビジネスで成功、ときくと、「競争に勝つ」というイメージです。
提案が採用され、交渉ごとも少しでも得をするようにすすめ、競合を出し抜き、蹴落とし…
 
ところが、相手に「与える」人のほうが、自分の得だけを追求する人よりも
成功していることが、さまざまな分野を調査して分かった。
その事実と理由を、組織心理学の見地から解き明かしている本が、こちらです。

 

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

 

 

著者のアダム・グラントは、31歳の若さでウォートンスクールの教授をつとめる、気鋭の心理学者です。
「楽しくてもっとはたらきたい」と思うように仕事をデザインする、組織心理学が専門です。
 
私は、昨年5月に、英語版を読みました。洋書に詳しい知り合いに薦めてもらったのです。
かなり興奮!しながら読み進めました。
著者の関連記事やブログなどを追いかけ、年末年始に再読して、改めて、よかったです。
 
日本語版は、1月10日発売だそうで、この記事は、原著を元に書いています。

 

Give and Take: A Revolutionary Approach to Success

Give and Take: A Revolutionary Approach to Success

 

 

この本では、仕事における人の行動を、3つのタイプに分けて考えます。
何事も自分の有利に運ぼうとする、テイカー。 (taker)
相手との損得をイーブンにしておきたい、マッチャー。(matcher)
相手の利益になることを優先したい、ギバー。(giver)
 
ビジネスでは従来、テイカー的行動が成功の秘訣と思われてきました。
ギバーは、職場の「いい人」だけれど、
ビジネス的成功という観点では、
ノーと言えず、カモにされ、踏み台にされる役回りのイメージです。
 
さまざまな職業で調査をしてみると、
確かに、もっとも成功していない、ダメダメグループにはギバーが多かった。
 
ところが、一番成功しているトップ層にも、ギバーが多いのです。
相手の利益を優先しながら仕事をしている「いい人」は
テイカーよりも成功を収めるようだ、と分かったのです。
 
本の前半では、ギバーがなぜ成功するか、
たくさんの具体例と、学術研究の例をひいて解説します。
 
後半では、成功するギバーと、「いい人」なだけでカモにされるギバーの
違いを解明していきます。
 
ここで、私がおおっ!と思ったのは
 
「相手の利益を大切にすることと、
 自分の利益を大切にすることは、両立する。
 対立軸ではない」
 
という考えでした。
 
成功するギバーは、無意識のうちに
このことを良く分かって行動している人たちだったのです。
 
本と同じくらい面白いのが、著者自身の人物像です。
クーリエ・ジャポンの2013年7月号に、詳しい記事がありました。
 
元記事は、New York Times Magazine です。
 
著者のアダム・グラントは、彼自身が、「超ギバー」で、
そんな自分のあり方が、研究テーマに投影されていったようです。
 
彼が大学院時代に行って、大変に注目を集めた実験がすばらしく、
クーリエジャポンの記事からその部分を引用します。
 
資金集めを目的とした大学のコールセンターで調査を実施した。
コールセンターは満足度の低い職場として知られている。
同じことの繰り返しだし、ひどい言葉を投げかけられることもあるので
精神的につらい仕事だ。
 
グラントは、センターの主目的のひとつは奨学金の資金集めだったため、
その奨学金で助かった、という学生を連れてきた。
電話をかけていた人たちは10分休憩を取り、この学生の話に耳を傾けた。
学生は奨学金のおかげで人生が変わったこと、
理想の職場で働くことになりわくわくしていることなどを話した。
 
結果はグラントさえ驚くようなものだった。
学生が話をした1ヵ月後、スタッフの電話対応時間は142%も増加し、
集まった資金は171%も増えていたのだ。

 

この実験で、まだ大学院生だったアダム・グラントは一躍、名を馳せました。
ダニエル・ピンクの新著でも、この実験が引用されていましたね。 

人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!-ダニエル・ピンク

 

周りの人のために何かをすることが、成功につながるって、すてきな考えですよね。

読んでうれしくなった本でした。